白昼夢みたいな
滅多に雪の降らない地域で生きてきたので、雪が降ると興奮する。
冬の一大イベントと言えば、降雪だという半ばあこがれに近い思い込みがある。
雪合戦をして、かまくらを作って、その中でおいしいものを食べる。
みたいな、理想をいまだに抱えている。
・・・え、そんな世界があるんですか?
都心部で雪が降っても、そんな幻想が形になることはない。
帰宅指示が出て、降雪で交通網がダウンし、滑って転ぶみたいなイベントしかない。
たまに、学生が雪合戦をしながら帰っているのを見て、これだよなんて思う。
雪国にはそれなりの大変さみたいなものがあるのだろうとぼんやりは思う。
(体験していないから、どういう大変さかを理解できず下手なことは言えないと口をつぐんでいる。)
ぼんやりとそんなことをうつむきながら考えていた帰り道。
ふと、融雪剤が「自分も雪ですよ。」みたいな顔をして道に鎮座しているのを目にした。
偽物の雪が、本物の雪を、一大イベントを、白昼夢にかえる。